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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)974号 判決 1953年5月12日

函館市豊川町五七番地

上告人

函館水産物株式会社

右代表者代表取締役

富永格五郎

右訴訟代理人弁護士

土家健太郎

北見国礼文郡船泊村大字船泊

被上告人

船泊漁業協同組合

右代表者理事

旭林蔵

右当事者間の売掛代金請求事件について、札幌高等裁判所が昭和二七年九月二九日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとは認められない。(受託裁判官のした証拠調の結果は、当事者が受訴裁判所の口頭弁論においてこれを陳述することによつて始めて援用したことゝなり、裁判所の判断すべき対象となるのである。本件において上告人(代理人)は第一、二審とも口頭弁論期日に出頭しなかつたため所論受託裁判官により為された証人立沢市助の証拠調の結果を陳述しなかつたのであるから、原裁判所が右人証を上告人において援用しなかつたものとして判決の事実摘示中に掲記しなかつたのは、もとより正当であつて、原審には所論のような違法はない)。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

昭和二七年(オ)第九七四号

上告人 函館水産物株式会社

被上告人 船舶漁業協同組合

上告代理人土家建太郎の上告理由

原判決は審理不尽の違法があつて破棄せらるべきものと信ずる。

原判決は「当事者双方の事実上の陳述、書証の提出認否、証拠調の結果の援用、当裁判所が為した事実上及法律上の判断は原判決の事実及理由に記載する処と同一であるから、これを引用する」と判示し上告人敗訴の判決を言渡した。

然れ共原判決が引用した第一審判決の事実及理由並一件記録を検討すれば上告人が第一審口頭弁論に於て上告会社は被上告人と直接取引したものでない事実立証のため立沢市助の証人喚問を求め其の証拠調を施行した事実があるにも不拘右証拠を判決事実摘示に遺脱し、従つて之に対する判断をして居ない事実が明瞭である。

尤も右証拠調の結果を上告人が弁論期日不出頭に依り援用せずと雖も苟くも其証拠調の採否を決定し之を施行した以上は当事者の援用を待つ迄もなく之に対し判断を為すべきものと解するを相当とする処、前示の如く原判決も第一審判決の其れを其儘引用し之に判断を与へざるは審理不尽の違法があつて破棄せらるべきものと信ずる。

以上

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